「事前認定の方がサービスでやってもらえて面倒じゃなくていいじゃないですか」と考える方もいると思います。
確かにその通りなのですが「本当にそれでいいのか?」という疑問が残ります。
つまり、「加害者が加入している任意保険会社に任せっきりで本当にいいのか?」ということです。
もちろん、被害者からの依頼があれば、任意保険会社は後遺障害申請の手続きを一通りは行ってくれると思います。
ですが、実際どのように手続きを行っているのか、どのような書類が提出されたのか、被害者にできる限り有利になるような形で行なってくれるのか、それは分かりません。
実際には、被害者の後遺症が、症状に見合った後遺障害等級の認定に必要な検査資料が提出されていないことにより、認定機関が症状の実態を把握できず、実際よりも低い等級認定となったり、非該当になったりすることもあるのです。
例えば、医者に記載してもらった後遺障害診断書に、訴えた自覚症状が詳しく記載されていなかったり、神経学的所見の検査がほとんど実施されておらず、このままだと等級認定は難しいといった場合
でも、それ以上のことをしてくれるとは期待はできません。
しかも、場合によっては、任意保険会社の顧問医の意見書が添付されることがあり、実は意見書の内容によっては、被害者にとって認定が不利に働くことがあるのです。
一方、被害者請求は、自分で後遺障害申請手続きを行うので、手続きの透明性が高まります。
被害者請求であれば、提出書類を自分でチェックすることができますし、任意保険会社の顧問医の意見書が添付される余地がありません。
また、自賠責の限度額を、任意保険会社との示談を待たずに先取りできることも大きなメリットの一つです。
後遺障害の認定だけ先に受けて、自賠責保険から保険金を先に受け取り、あとは相手任意保険会社との示談に向けて、じっくりと取り組むことができます。
先に自賠責保険から保険金を受け取ることには、他にもメリットがあります。
後々交渉を有利に展開できる可能性があります。
事前認定の場合、任意保険会社は、自賠責保険と任意保険をまとめた形で金額を提示し、示談交渉に臨みます。
中には、自賠責保険の範囲内で、もしくはそれより少し上乗せしただけの金額で、提示してくる場合もあります。
それで示談してくれれば儲けものという考えです。
自賠責保険の範囲内で収まれば、任意保険会社は自腹を切る必要はないのです。
事前に被害者請求によって自賠責保険から損害賠償額を獲得しておけば、任意保険会社も、後遺障害部分で「0円」、もしくはゼロに近い数字を提示しづらくなります。
ある程度の後遺障害の補償額を提示してくれる可能性は高まると言えるでしょう。
事前認定と被害者請求どちらにするかは、認定結果に大きな影響を及ぼすのです。